目的が伝わらないとどんなことが起こる？

コロナ禍真っ最中に開催された「ＴＯＫＹＯ２０２０」。前例のないことだらけのこの大会は、開催前から賛否両論、大混乱、様々な意見や判断があり、興味深いものでした。

「何のためにそれをするのか？」すべての判断の前提となるべき「開催の目的」が、最後まで伝わらなかったのが印象的です。

実際、メディアは開催直前まで、「何のためにこの時期に開催するのか」という批評を繰り返し、開催中もオリンピック関連施設周辺ではデモ隊が、「なぜ人命をおろそかにしてまで開催するのか」と叫んでいました。

ＴＯＫＹＯ２０２０大会のテーマのひとつが「多様性と調和」。辞書によると、多様性とは「幅広く性質の異なる群が存在すること」、調和とは「ほどよくつりあって、矛盾や衝突などがなく、まとまっていること」とあります。

オリンピックの開会式を見て感じたことは、確かに多様だったなということ。そして同時に、うんなるほどね、いろんな人の顔を立てて、できるだけ衝突がなさそうなところで構成したのね、ということも感じました。

感じ方は人それぞれだと思いますが、私には開会式でも目的が伝わらなかったのです。

なんで目的を明確にしないといけないの？

目的が見えず、多様性が単なるバラバラで、調和が単なる事なかれ主義だったら、そこに感動が生まれることなどあるのでしょうか。

このようなイベント事に限らず、何をするにしても、すべての人の意見が完全に一致することなどほぼありません。でも、みんなの意見の中間を取ろうとすると、一層混乱するし、感動も成果も生まないのです。

経営においては、これからも多様性のある人材を採用していくでしょう。それにより組織がバラバラになり、多様な人たちに常に忖度しながら物事が決まっていくということにならないようにしないといけません。

だからこそ、目的を明確にするのです。そして、どれだけ賛否両論あっても、定めた目的にそってすべてを決断するのです。

どんな目的にすればいいの？

何を決めるにおいても、表にも裏にも様々な要素があるわけですが、それらすべてに配慮した目的だと切れ味は鈍ります。

個人に関する目的は自由に決めればよいわけですが、組織が動く目的においては、できるだけ多くの人が心動かされる目的を定める必要があります。

その行きつく先は、人としての善良さを基軸とした公明正大な大義名分ということになるのではないでしょうか。それを突き詰めれば、かなりシンプルな目的にたどりつくはずです。

目的を定めたらそれでいいの？

残念ながら、目的を定めても人はすぐそれを忘れます。
実際、あなたは、「何のためにその仕事をしているの？」と問われたら、即答できるでしょうか？

いったん目的を定めたならば、それを折に触れて、繰り返し繰り返し、伝わるまで伝えることが重要です。

さらに大変なのは、すべての施策や細かい言動にいたるまで、その目的とずれていないことが求められます。だから、目的を明確にするのは相当な覚悟がいるのです。生半可な気持ちで目的を定めることなどできません。

目的は、リーダーが一人で定めても構いませんし、全員で話し合って定めてもいいでしょう。ただしいずれにしても、リーダーは誰よりもそこから目を背けず、誰よりもそれについて語り、誰よりもそれを実践する必要があります。

先の見えない時代におけるリーダーシップの重要性をあらためて感じます。

あなたは何のためにそれをしますか？？

このレポートの解説者

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

コンサルティング事例・サービスのご紹介